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策士、策に溺れる
2006.09.16 (Sat)
中 日-阪 神 17回戦 (中日12勝4敗1分、ナゴヤドーム、38107人)
 
虎 0 0 0 0 0 0 0 0 0=0
竜 2 0 0 0 0 1 3 1 X=7

【投手】
(神)下柳(10勝11敗)、久保田、桟原-矢野、浅井
(中)川上(15勝5敗)、中里、小林、鈴木-谷繁

【本塁打】



「彼らの力を信じましょう、か…」
岡田監督は、ダッグアウトを飛び出していった平田コーチの後ろ姿を眺めながらつぶやいた。
確かに、いまの調子ならば、お得意の策を弄せずとも、
選手は100%の力を発揮してくれるだろう。
しかし…。
「不安があるとすれば、アイツだけや」

「愛のお立ち台事件」以来、下柳とは全く連絡が取れない。
矢野や赤星からのメールにもいっさい返事がない、という報告を受けている。
名古屋への移動のときにも、彼の姿はなかった。
勘の鋭い記者たちから、早速質問を浴びる。
「そんなもん、オマエ、先乗りしてるに決まってるやろ」
と言ってごまかしたものの、果たして信用してもらえたのか、
岡田監督にも自信はなかった。

万一を想定して、井川を名古屋に帯同させている。
さらに「今岡復活」を匂わせることで、
記者たちの目を逸らすことにもある程度成功している。
ただし、こんな小手先の策がいつまでも通用するはずがない。
事態が発覚したときは「急病」と発表するよう、横谷広報にも伝えておいた。
もちろん、嘘だ。
ベンチの隅で岡田監督は、再びつぶやいた。
「どこにおるんや。はよ来てくれ。お前の力が必要なんや」

「監督、ご心配おかけしました」
突然、目の前に現れた下柳の巨体に、さしもの岡田監督も一瞬たじろいだ。
「お、おお、元気やったんか。それやったらええんや」
「すみません。で、今日は予定通りですか?」
「そうやな。頑張ってくれや」
「はい」

「来てくれたか…」
安堵のため息を漏らした岡田監督だったが、
ふと、先ほどまで目の前に立っていた下柳の表情を思い返してみて、
一抹の不安を覚えた。
そして、その不安は的中することになる。

下柳という投手は、マウンド上で、おびただしいほどの熱を発する。
ジャッジへの不満、緩慢な守備、自身のふがいない投球。
これらに対して下柳は、はばかることなく怒りを露わにする。
その怒りが熱気となり、やがて各選手へ伝わっていくと、
それが好打を生み出す集中力の源となり、
また好守を生み出す緊張感の源ともなる。

この3連戦、初戦の先発は福原で行くことも考えられたが、
岡田監督は、下柳の発する、この「熱」に期待した。
相手は中日。しかも苦手とするナゴヤドーム。
単なる勢いだけでは勝てない。
下柳のみがもっているこのパワーに、初戦の勝利を賭けた。
ところが…。
この試合、下柳は全く熱を発することはなかった。
微妙な判定があっても、フォアボールを出しても、
表情一つ変えることなく、淡々と投げ続けるだけだった。
その顔は、まるで何かを悟ったかのようだった。

突き詰めるまでもなく、その「何か」を岡田監督は理解していた。
「すべてがパーや」
岡田監督の絶望は、次第に、ある人物への怒りに変わっていった。
そう。あの日、お立ち台ではしゃぎ倒していたあの男への怒りに。
「やっぱりあれはやりすぎやったんや」

「策士、策に溺れる、か…」
怒りにうち震えている岡田監督の姿をみて、久保コーチはつぶやいた。
そろそろ辞め時かもしれない。漠然と、そう思いつつ。
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