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ヤマモトさん
2007.01.30 (Tue)
大学時代の4年間、僕は、飲み屋でバイトをしていた。
ろくに学校にも行かず、もちろんサークルにもクラブにも在籍していなかった自分にとって、
18歳から22歳までの4年間は、夜の世界こそが、生活のすべてだった。

ヤマモトさんは、そのバイト先の、雇われ店長だった。
一回り以上違う僕のことを、ことのほか、かわいがってくれた。
酒に競馬にカラオケ。ヤマモトさんにはずいぶん鍛えられた気がする。

店が終わると、
「喜八お疲れ。今日もサクッと行っとくか」
結局「サクッと」では済まず、始発に乗って帰る毎日。
週末は、そのまま梅田の場外へ直行。
そんな日々の繰り返しに、僕は、将来への不安を抱きつつも、
目の前の誘惑には勝てず、アンダーグラウンドの世界にどっぷり浸っていた。

飲んだ翌日、僕が店で仕込みをしていると、
ヤマモトさんは、いつもフラフラになってやってきた。
「あれからウチ帰ってまた飲んでもた」
そう言いながらヤマモトさんは、オールドパーをショットグラスに波々と注ぐ。
「迎え酒や」
そのままストレートで一気。
「よし、これで今日一日もつわ」

一度、冗談交じりに注意したことがある。
「そんなことばっかりしてたら死にますよ。今日明日死んだって、俺、葬式なんか行きませんからね」
「アホか。俺は飲まんかった日の方が調子悪いんじゃ」
そういってヤマモトさんは笑っていた。

どうにかこうにか4年で大学を卒業し、最後のバイトの日。
「前に俺が言うたこと覚えてます?死んだいうて連絡もらったって、絶対に葬式出ませんよ」
「おお、わかっとる。その前にお前の結婚式出んとあかんからなあ。頼むで」
「まあ、たぶんそっちの方が先でしょうけどね」
「よう言うわ。はよ彼女見つけろ。話はそれからや」

就職で東京に出てきた僕は、ヤマモトさんと会うこともなくなっていた。

数年後、正月休みで大阪に帰ったとき、当時のバイト仲間と飲む機会があった。
「喜八、ヤマモトさん、去年死んだで。肝硬変や」

やっぱり。僕は大して驚きもしなかった。
あんな生活続けてたら、当然や。

「前に一回、ヤマモトさんと飲んだことあるんや」
へえ。
「ヤマモトさん言うてたわ。『喜八、アイツいつになったら結婚すんねや』って」
……。
「『俺もなあ、もうそんなに先行き長くないかもわからんけどな、アイツが結婚するまで死ねんのや。約束したからな』って言うてたで」
……。
「何かの冗談やと思ってたけど、そのあと、しばらくしてホンマに死んでしまわはった」
……。

ヤマモトさん、ごめん。俺、まだ約束果たせてません。
でも、先に約束破ったの、ヤマモトさんですからね。
おあいこですよ。



この話はフィクションかもしれませんし、ノンフィクションかもしれません。

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【記事編集】 |  23:01 |  未分類  | トラックバック(0) | コメント(6) | Top↑
コメント
■僕のおとんは、
今月、心臓に管を入れた。
原因は、言うまでもなく「酒」。
僕のおとんもヤマモトさん。

瑞江辺りのヤマモトさんも気をつけなね。
KEN |  2007.01.31(水) 11:13 |  URLコメント編集
■アルコール分解工場
将来にわたって人工臓器が最も困難といわれるのが脳と肝臓。今世紀中は絶望でしょう。よって、この二つは、取替え不可能なバッテリーパックだと心するしか有りません。バッテリー寿命が即ち製品寿命。いたわって使ってあげるしかありません。

でも、脳は使えば使うほど性能が維持できるのに、肝臓はデリケートなピッチャーの肩のように、使い減りしてしまうもの。球数を見極めながら、一生かけて使っていく必要があります。
ねえねえ、聞いてる?>瑞江の大将
いわほー |  2007.01.31(水) 12:24 |  URLコメント編集
■感謝感激雨霰
ご心配お掛けして申し訳ございません。
2月は2回だけにします。
その他の日は仕事が終った後の生1~2杯に・・・・一週間に2回抜きます。
高タンパク低カロリーのもんを食べて睡眠を7~8時間とります。
塩分控えめ、ウォーキング一日5キロ、体重ベストの62キロに。
以上2月の目標デス。
でんまん |  2007.01.31(水) 17:20 |  URLコメント編集
■KENさま。
>今月、心臓に管を入れた。
え!それは大変でしたね。
経過はいかがでしょうか。
心臓がつらくて「しんどい」って言ってた人が、
手術によって劇的に回復することも多いです。
お父さんもそうだといいですね。
喜八 |  2007.01.31(水) 22:35 |  URLコメント編集
■いわほーさま。
>脳
最近僕は、「妄想脳」が異常に発達してきて困ります。

>デリケートなピッチャーの肩
さしずめ、瑞江の大将の肝臓は、権藤博のごとく、酷使に耐えているんでしょう(泣)。
でんまん、でんまん、雨、でんまん……。
喜八 |  2007.01.31(水) 22:41 |  URLコメント編集
■でんまんさま。
いわほーさんへの返事と矛盾してるかもしれませんが、酒量に関しては、でんまんさんはヤマモトさんより遙かに少ないです。
実際、ヤマモトさんの酒量はハンパじゃありませんでした。
ただ「無意識のうちに豚鮭定食を食べてた」とか、
「明け方に賄いのカツ丼を食べた」とか、
そっちの方が怖いです。
どうかご自愛ください。
喜八 |  2007.01.31(水) 22:50 |  URLコメント編集
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