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デスノート
2007.02.11 (Sun)


「一軍入らへんよ」

3イニング3劇場。
久保田ファンにとっては、「順調な仕上がり」と映ったかもしれない。
しかし、もちろん久保田本人は納得していなかった。
そこへもってきて、冒頭の岡田監督の言葉。
久保田の怒りは増幅されていた。

――何が「左が競争と言っているから安心しとるんちゃうか」だ。
――いままで、ただの一度も「左が競争」なんて言ってないじゃないか。
――「ポスト井川=サウスポー」と考えるのはド素人やって、ずっと言ってたくせに。
――それがなんだ。一時の激情に駆られて、口から出任せで人を非難しやがって。

怒りが収まらないまま、久保田は宿舎に戻るのだった。



ホテルに着くと、フロントから声をかけられた。
「あっ久保田様、お便りをお預かりしております」
久保田智之様、と書かれた角2サイズの封筒。
差出人の名前はない。

部屋に入り、さっそくその封筒を開けてみた。
真っ黒なノートが一冊。
表紙には、

DEATH NOTE

と書いてあった。

久保田は苦笑する。
――なんだ、一足早いバレンタインのチョコじゃなかったのか。
――それにしても、いくら俺が流行に疎いからって、いまさらデスノートはないだろ。
久保田はそうつぶやきながら、ノートの1ページ目に、

岡田明信
岡田彰伸
阪神タイガースのかんとくの岡田あきのぶ

と書き込んだのだった。



翌朝、出発の準備を整えてロビーに降りていくと、
岡田監督が記者団に取り囲まれていた。

――チッ、まだ生きてたのか。
――まあいい。この場で倒れたら大騒ぎになるぞ。

その瞬間を、少しでも近くで見ていようと、
久保田はさりげなく、そばのソファーに腰を下ろした。
岡田監督の声が、よく聞こえる。

「そうですね。昨日の試合は投手陣が全体的に不調でした」
「もちろん久保田だけではありません。その後に投げた杉山も桟原もまだまだダメです」
「一軍ですか。そうですね、筒井が当落線上にようやく引っかかったという程度でしょうか」

……「うわ、きしょっ!」
思わず声をあげてしまった。
久保田は、全身が総毛立つのを感じた。
普段、コテコテの大阪弁でしゃべるはずの岡田監督が、
やけに丁寧な言葉遣いをしている。
取り囲む記者団も、監督の異様な話し方に戸惑いの様子を隠しきれないようだ。

――まさか……。
久保田は、バッグの中から昨日のノートを取り出し、改めて表紙を見てみた。
――やっぱり。

DEATH マス NOTE

――ですますノート……。

久保田は頭を抱えるのだった。



そんな久保田の、トドのような背中を眺めている一人の男の姿があった。
――なるほど。あのノートに名前を書けば、言葉遣いが丁寧になるのか。
――どうやら大阪弁を標準語に変える力もあるようだな。
頭の良い彼は、すべてを理解してしまったようだ。

背番号1のユニフォームを着たその男は、
さっそく頭の中で、そのノートに書き込む候補者をピックアップしはじめた。
――正田さん、藤本さん、関本さん……。
――濱中さん、今岡さん、あ、今岡さんはときどき妙な発音の標準語しゃべってるな……。

妄想が止まらない彼を一人、ロビーに残し、バスは出発したのだった。
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